昨年度までに、イチゴ果実における繰り返し衝撃による損傷発生において、衝撃1回あたりの損傷度(D)が、ピーク衝撃加速度(Acc)と対となる速度変化(Vc)の違いによって様々に変化することを明らかにした。実際の輸送環境においては、包装される対象物が同一であっても、使用される包装容器や緩衝材が異なったり、多段に積み上げられたりと包装条件は様々に変化する。これと対応し、被包装物に衝撃が印加された際のAccとVcの組み合わせも、包装資材や部位によって、様々に変化することが想定される。このことは、実輸送においてDが包装形態や部位により大きく変化する可能性を示しているとともに、従来明らかにしたS-N曲線のみに依存した損傷予測モデルを用いて損傷発生予測を行った場合、汎用性が低い、あるいは精度が保証できないといった問題が発生する可能性を示唆している。そこで本年度は、包装形態の違いや部位により被包装物におけるDがどの程度変化するのかを明らかにするため、イチゴ果実を用いて、段ボール箱内底面に配置する緩衝材の物性の違い、および多段積みされた段ボール箱における部位(段)の違いが、Dに及ぼす影響について調査した。落下試験の結果、緩衝材や部位の違いによりAccが異なる場合であっても、Dが同等となる状況が発生することを確認できた。これはAccと対となるVcの影響によるものと考えられ、昨年度までの成果を支持する結果であった。以上より、青果物の実輸送中における損傷発生予測を実施する上で、使用する包装資材や部位ごと、すなわちAccとVcの組み合わせごとにDを算出しておく必要があること、および緩衝材が不適切な場合、損傷発生を防止できない可能性が明らかとなった。以上、得られた知見は、緩衝包装設計および実輸送中の損傷発生予測における精度の向上に資するものと期待される。
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