研究概要 |
衛星・航空機観測による水稲生育の広域把握を目指し、衛星観測モデル改良に必要なデータセットの効率的な収集と蓄積、および衛星観測を補間する広域観測手段の開発に資することを目的に従来の光学リモートセンシングにくらべ天候・雲障害を受けにくい能動型センサであるレーザスキャナを用いた広域かつ圃場単位での水稲生育情報の推定手法の開発に取り組んだ。今年度は、前年度の地上実験データを用いて、水稲群落へのレーザ入射角の変化とレーザ入射深さの関係を解析した。レーザ入射角±18度の範囲で取得したデータを比較した結果、植被率が小さい時期(20%程度)では、変動幅が数cmと小さいものの、レーザ入射角の増加にともないレーザ入射深さが増加する傾向がみられた。また、レーザスキャナデータの高さ分布の特徴を指標化した値(指標値)が植被率の増加を説明している可能性を確認した(相関係数0.9)。航空レーザ計測については、6月~8.月にかけて高度300mでの高密度計測を実施し、航空レーザ計測データと地上計測した植被率との対応を解析した。レーザ計測データ相互間の高さ変動は3~5cm、水稲植被率は12,29,70%であった。各時期のレーザ入射深さは3,18,17cmとなった。それぞれ、高さデータの上位1%の高さを草丈と比較すると、20,26,46%となり比較的、茎葉が繁茂している時期においても、レーザが水稲群落上部で反射せず、内部へ深く入射していることを確認した。このことから、植被率が小さい生育初期から中期では、鉛直方向の航空レーザ計測データでは、ほとんど茎葉の情報が取得できない可能性が高いといえる。今後、引き続き地上実験を実施し、入射角や高さデータの分布形状を用いた植被率推定モデルの改良や、稲株の小さな時期においても、茎葉の繁茂状態の変化により鋭敏に捉える航空レーザ計測方法を検討することがレーザスキャナを用いた広域の水稲生育情報推定手法の開発に必要であることがわかった。
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