研究概要 |
本年度の研究目的は,1) 作業者絶対位置と作業姿勢の同時検出システムの開発,2) 確率モデルを用いた作業行動のモデル化,3) 作業要所抽出フィルタの開発,の3つあり,それぞれについて重要な成果がいくつか得られた.まず,作業者絶対位置ならびに作業姿勢を同時に検出する実験では,実際の屋外圃場において,GPSを使用することなく,首振りカメラを1台だけ用いて,カメラから作業者までの距離が38mまでの範囲で,位置計測分解能が約1m,作業者のyaw角分解能が前後左右の4方向,計測速度が毎秒20フレームで安定して検出できる結果を得た.屋内作業空間における実験では,4方向のyaw角に加え,さらに8種類の作業姿勢を検出できる結果も得られた.次に,確率モデルを使って作業行動をモデル化する実験では,しゃがむ・立ち上がる・方向転換する・腕を曲げ伸ばしするといった身体全体を使って行われる作業動作と,指先や腕といった身体の一部を使って行われる作業動作,の2種類の作業動作について,隠れマルコフモデルを用いた作業動作のモデル化を行った.屋内作業空間を用いた実験では,モデル化した作業が,処理速度,安定性とも実用上問題ないレベルで認識される結果が得られた.最後に,作業の要所を抽出するフィルタの開発では,エンドウ豆の播種作業を例に,作業要所における代表的な作業動作が,次に示す3つのステップを踏みながら抽出される方法を開発した.第1ステップでは,作業者によって繰り広げられる複雑な作業動作から,理解すべき重要な作業動作を抜き出す作業を行い,第2ステップでは,抜き出した作業動作を,個人差や変動が大きい動作と,変動の少ない動作に分割し,第3ステップでは,変動の少ない動作を隠れマルコフモデルで学習する,の3ステップを適用することによって,播種作業時の重要な作業動作を,個人差の少ない一部の作業動作のみを使って,効果的に抽出できる結果が得られた.
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