本研究の目的は、RFIDを用いた農作業自動認識システムを実現するために、農作業中に記録されるRFID読み取りデータから自動的に作業内容を判別する手法を開発することである。ポイントは、RFIDリーダを装着した作業者が複数の作業対象物に貼付されたRFIDタグを作業過程で無意識的に読み取ることで、自動記録された時系列データにおける作業対象物の組み合わせや順序から作業内容を判別する手法の策定である。そのために「複合イベント処理(CEP)」技術を応用することで、パターン認識手法を用いた作業判別・記録システムを開発した。本年度の研究内容を以下に示す。 1.膨大で多種多様な時系列データから意味のある情報を高速に抽出する技術は「複合イベント処理(CEP)」とよばれ、パフォーマンスの高いCEPエンジンが開発されている。CEP技術を農作業自動認識システムに応用するべく、特定の作業や行動において作業者が作業対象物(オブジェクト)を保持または接触することを「イベント」とよび、特定のイベントのパターンに「5W1H」の関連付け(意味付け)をして抽出することで、作業や行動の内容を判別・記録する手法を考案した。これにもとづき、CEPによる作業判別・記録システム、ならびにイベントとオブジェクトの関連を効率的に記録・参照するためのデータベースを構築した。 2.前年度までに構築したウェアラブル型RFID農作業自動認識システムの試験環境ならびに前述の作業判別・記録システムを用い、農薬の調整や散布、果実め収穫や搬出などの作業を想定して作業対象物にRFIDタグを貼付し、実際の作業現場において作業内容の判別・記録を検証する試験を実施した。作業や行動の内容とイベントパターンとの関連付けについてキャリブレーションを行うことで、高い精度での作業内容の判別・記録が可能であることを確認した。
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