1.酪農現場における風味異常乳の原因の一つである脂質酸化臭の発生要因を明らかにするために生乳成分が特徴的な放牧時の生乳を試料とし、試験を実施した。本研究では、北海道大学および北海道農業研究センターの研究農場において、舎飼い時期、放牧移行時期および放牧時期に経時的にサンプルを採取した。採取した生乳は、冷蔵庫で0、12、24、48および96時間、断続的に攪拌しながら冷蔵保存し、経過時間毎のサンプルは-80℃で分析まで冷凍保存した。 2.生乳中過酸化脂質量(PV)は舎飼い時期から移行時期にかけて増加し、放牧前期には低下、放牧後半で再び上昇する変動を示した(14.8、27.3、15.2および32.1 mM of O_2/L of milk)。また、生乳中PVは生乳中のα-リノレン酸および共役リノール酸割合と正の相関があり、構造的により不安定な炭素数18の脂肪酸が過酸化脂質に転換されたと考えられる。しかし、冷蔵保存時間の経過に伴うPV値の変化は緩慢であり、やや低下する傾向がみられただけであった(0、12、24、48および96時間;32.1 31.4、29.7、29.7および28.7 mM of O_2/L of milk)。 3.前年度でも同様の結果が得られており、これらの結果からPVは脂質酸化臭の原因物質(アルデヒドとされている)の変動を表すには不適であり、原因物質自体の測定が必要となった。そこでアルデヒドの定量化方法を検討し、アルデヒドのHPLCでの定量化方法を確立した。その結果、放牧後半の生乳ではMalondialdehydeやHexanalなどのアルデヒドが冷蔵保存時間の経過に伴い増加することを確認した(Hexanal:0、12、24、48および96時間;18.9、19.4、19.3、20.5および27.4μM)。今後はアルデヒドの生成とその他の生乳成分(脂肪酸、抗酸化物質など)との関連を検討する必要がある。
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