1.酪農家バルク乳レベルでの生乳成分と脂質酸化臭原因物質量との関係を明らかにするために試験1では飼養条件が異なる酪農家バルク乳(n=30)、試験2では原料(n=7)および加工処理(3処理:HTSTホモ、HTSTノンホモおよびUHTホモ)が異なる牛乳を試料とし、それぞれで生乳成分と脂質酸化の指標物質であるヘキサナールとの関係を検討した。酪農家バルク乳は採取日当日(Oh)、48および96時間まで冷蔵保存し、経過時間毎のサンプルは-80℃で分析まで冷凍保存した。 2.[試験1]酪農家バルク乳はヘキサナールのOh含量と96hまでの増加率によりOh含量が低く変化率が低いA群、Oh含量が低く変化率が高いB群およびOh含量が高く変化率が低いC群の3つの群に分類できた。問題となるのはBおよびC群である。多価不飽和脂肪酸であるリノール酸割合はB群が最も高く、共役リノール酸およびα-リノレン酸割合はC群が高かった。抗酸化物質であるβ-カロテン含量はAおよびC群でB群と比較して高く、Ohのα-トコフェロール含量に群間で差はないが、A群でのみ96hまでに減少する推移を示した。 3.[試験2]加工処理の強度(HTSTもしくはUHT)がヘキサナール増加に及ぼす影響は明確ではなかったが加工処理によりヘキサナールが増加する原料(増加群)と減少もしくは変化しない原料(無変化群)が存在した。原料の脂肪酸組成、β-カロテン含量に群間で大きな違いは無かったが、増加群と比較して無変化群ではα-トコフェロール含量が高い傾向にあった。 4.以上より、牛乳中のヘキサナール含量の変動には生乳時の脂肪酸組成、特にリノール酸およびα-リノレン酸が関与し長期保存時の変動様相に影響する事、また抗酸化物質であるβ-カロテンおよびα-トコフェロール含量が長期保存時および加工時の変動に関連する事を明らかとした。
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