1)ヒトのブラシ処理に対する繁殖牛の初期反応 岐阜大学飼養の繁殖牛19頭(ブラッシング未経験牛)を用いた。供試牛の頭部、頸部、腹部に対して、30秒程度ブラッシングを行った。ブラッシングする部位の順番はランダムに設定し、行動観察からウシの反応を記録した。供試牛19頭、18頭で1回目のブラッシングに対して忌避反応を示し、残りの1頭は忌避反応、体を寄せてくるなどの好反応を見せなかった。頸部に対するブラッシングで少し好反応をみせる個体が2頭程度確認されたのみであった。以上から、ブラッシングは未経験牛にとって忌避刺激であることが分かり、馴致が必要であることが分かった。 2)肥育牛におけるブラシの利用実態調査 飼養環境へのブラシの設置のエンリッチメント効果の機構を更に明らかにすべく、肥育牛における身繕い用器具の利用実態を調査した。肥育牛のブラシ利用状況を24時間観察し、ブラシ利用でウシ自身が身繕いを行う部位や利用時間帯について記録した。1頭1時間当たりの平均の利用回数、利用時間はそれぞれ1.2±0.9(回)、22.7±19.1(秒)であった。確認された身繕い部位は、頭部、頸部、前肢、わき腹、背中、十字部、後肢、尾部であり、利用が一番多かったのは頭部で身繕い用器具総利用時間の31.2%、次に頸部で28.5%、背中で8.3%であった。その他にも、身繕い用器具を舐める行動も総利用時間の11.1%観察された。日内変動の解析より、身繕い用器具の利用時間のピークは、朝の給餌前1時間、朝と夕方の給餌後1時間と2時間の時間帯であった。以上の肥育牛における身繕い用器具の利用実態から、ウシの身繕い行動や器具を舐める行動を刺激する事がブラシ設置のエンリッチメント効果をもたらす可能性が示唆された。
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