近年、野生動物による農林業被害の増加は非常に大きな問題となっている。このような野生動物の問題に対して、生態リスクマネジメントではリスクとして望ましくないことが起こる可能性を定量的に評価できるため、保護と被害といった両極端のリスクを同一線上の課題として取り扱うことが可能となる。野生動物の保護管理計画の策定に際しては、不確実性や環境変動を考慮する必要があるため有効な手段となりうる。本研究では、生態リスクマネジメントを野生動物の農林業被害評価に適用し、被害原因の明確化および適切な管理手法の構築を目的としている。栃木県を対象として、国土地理院および環境省など公的機関が蓄積している植生や土地利用、地形、気象などの環境情報および野生動物の生息分布情報を収集した。あわせて、栃木県内におけるシカの捕獲数および捕獲努力量データを収集した。全てのデータは、国土地理院による標準地域メッシュの第2次地域区画の4分の1に相当する区画(以下、5kmメッシュ)の単位で集計し解析を行った。次年度は、これら既存のデータと栃木県内における被害状況との関連を解析し、被害の発生しやすい環境要因の抽出とリスクマップの作成方法について検討する。また、シカによる林業被害報告から被害程度(激害、中害、微害)の異なる調査地を3ヵ所設定する。上記のデータに加えて、調査地におけるシカの利用可能な餌資源量の測定を実施し、栄養的観点から林業被害原因の特定および評価を行う予定である。
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