研究概要 |
カビ毒は国内外の飼料で見つかっており,中でも中緯度地域ではFusarium系のカビ毒の検出が多く,その潜在性評価と挙動の解明とが求められている。本研究では,汚染頻度が高いFusarium graminearumとそのカビ毒であるデオキシニバレノールに着目した。飼料作物のポストハーベスト(収穫後~圃場乾燥・サイレージ調製)の段階を想定し,デオキシニバレノール汚染の発生条件や挙動を実験的環境下で明らかにすることを目的としている。 まず初めに、飼料生産の場で想定される様々なpH環境下において、デオキシニバレノールの安定性を検証した。標品のデオキシニバレノールをpHの異なる溶液に溶解し、30℃で5日間インキュベートし、それらの溶液に残存するデオキシニバレノールをHPLC-PDAにて定量した。その結果、植物中のpHで想定される弱酸性領域や中性領域では、デオキシニバレノールは安定しており、残存率は95~100%であった。一方、わら類のアルカリ処理に用いられる場合を想定した塩基性領域における残存性は、20~60%と低く、塩基性側で不安定な化合物であることが明らかとなった。続いて、塩基性溶液としてアンモニア、炭酸ナトリウムを0.1M~0.5Mに、水酸化ナトリウムを0.01M~0.05Mに調整し、各溶液中の安定性を検証した。その結果、デオキシニバレノールの残存率は、アンモニア水中では32~70%、炭酸ナトリウム水溶液中では9~35%、水酸化ナトリウムでは1~18%といずれの溶液中でもデオキシニバレノールが減少することが明らかとなった。以上の結果より、デオキシニバレノールは、植物に由来する弱酸性領域では安定しており、飼料の化学的処理に伴う塩基性領域では不安定になることが認められた。
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