本研究では、ソマトスタチンがニワトリヒナ独自の摂食促進機構を担っている可能性があると考え、その摂食促進作用機序を解明することを目的としている。昨年度の研究によりソマトスタチンの摂食促進作用には成長ホルモンが関与していないことを見出したが、両者の関係をより詳細に調べるために、成長ホルモン受容体欠損ニワトリヒナにソマトスタチンを中枢投与した後の摂食量の変化を調べた。予備実験の段階ではあるものの、ソマトスタチンは成長ホルモン受容体欠損ニワトリヒナの摂食行動を促進することを見出した。この摂食促進作用は野生型よりも強力だったことから、ソマトスタチンと成長ホルモンとの間に関係がないとは未だ言い切ることはできず、今後の研究が必要であると考えられる。次いで、ソマトスタチンの摂食促進作用と関わりのある摂食調節因子の探索を開始した。内分泌学的な手法により、ソマトスタチンを中枢投与すると血中プロラクチン濃度が減少することを見出した。さらに、同じくヒナの摂食促進因子であるプロラクチン放出ペプチドにも同様の作用があることを見出した。このことから、ソマトスタチンの摂食促進作用はプロラクチン放出ペプチドと関係がある可能性が考えられた。また、ヒナにおける未知の脳内摂食調節因子を探索したところ、新たにニューロメジンB、C、Sの3種を見出すことができた。次年度はこれらの因子とソマトスタチンの関係を分子生物学的に調査することが課題である。
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