本研究では、ソマトスタチンがニワトリヒナ独自の摂食促進機構を担っている可能性があると考え、その摂食促進作用機序を解明することを目的としている。本年度は、ソマトスタチンの摂食促進神経ネットワークを分子生物学的手法で明らかにすることを中心に研究を進めた。まず、ニワトリヒナの各組織におけるソマトスタチンとソマトスタチン受容体1・2・3・4・5のmRNA発現部位をRT-PCR法で調べたところ、いずれも脳に多く発現していることを明らかにした。さらに、卵用種ヒナとブロイラーヒナの間脳のソマトスタチンmRNA発現量をリアルタイムPCR法で調べたところ、同mRNA発現量が絶食により有意に増加したことから、脳内ソマトスタチンはニワトリヒナの摂食を促進している可能性が強く示唆された。さらに、ソマトスタチンの摂食促進作用に関わる摂食調節因子を明らかにするため、まず成長ホルモン受容体欠損ニワトリヒナを対象とした遺伝子発現の調査を実施した。その結果、成長ホルモン受容体欠損ニワトリヒナの全脳におけるソマトスタチンmRNA発現量は野生型よりも有意に高いことを見出した。さらに、欠損ヒナでは脳内グレリンと成長ホルモン放出ホルモンmRNA発現量が高かった。さらに、ソマトスタチン脳室内投与後に血中インスリン濃度が低下することを明らかにした。以上のことから、ソマトスタチンの摂食促進作用が成長ホルモン、グレリン、成長ホルモン放出ホルモンそしてインスリンと関係していることが示唆された。なお、ソマトスタチンを脳室内投与した後の血糖値と血中遊離脂肪酸濃度を調べたが、両者には有意な変化は見られなかったことから、ソマトスタチンは栄養素の代謝とは関係がないと考えられる。
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