研究概要 |
本研究は,地球温暖化に伴う気温上昇の影響により作付面積の拡大が予測される暖地型イネ科牧草における窒素利用特性を評価し,バイオマスの利活用推進に伴って使用量が増加することが予測される堆肥などの有機質肥料に対する影響を明らかにすることを目的とする。寒地型牧草に比べ生産力が高く収量性に優れている暖地型牧草を含めた飼料作物栽培では,安定した生産量を確保するために有機質肥料の投入が不可欠となる。有機質肥料は,原材料や製造方法が多岐にわたるため養分の無機化を含めた施肥効果には不明な点が多い。本試験では,暖地型イネ科牧草における施用窒素形態に対する反応を明らかにするため尿素を施用する無機態窒素区とコメヌカとローズグラス乾草の混合物を圃場に鋤き込む有機態窒素区を設け,施肥窒素形態に対する暖地型牧草の施肥反応を調査した。有機態窒素区および無機態窒素区とも窒素施用量で15kg/10aとなるように施用量を調整した。また,リン酸(7kg/10a)およびカリ(15kg/10a)の施用量は両区とも同一とした。供試草種は,ローズグラス,バヒアグラス,ソルガムおよびネピアグラスの4草種を各処理ともそれぞれ3反復で実施した。栽培後の土壌中の全窒素含量はローズグラス,バヒアグラスおよびネピアグラスでは施用形態間に有意な差はみられなかったが,ソルガムでは有機態窒素区が無機態窒素区に比べ5%水準で有意に高くなった。1番草の草丈は,ローズグラスおよびネピアグラスでは有機態窒素区で有意に低くなった。また,ネピアグラスおよびバヒアグラスの乾物収量は,無機態窒素区に比べ有機態窒素区で20%程度の減収であった。ソルガムでは窒素の施用形態に関わらず収量は両区とも同程度であった。ローズグラスでは無機態窒素区に比べて有機態窒素区で高く,有機態窒素の施用効果が高い可能性が示唆された。
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