体外培養技術の改良により、体外成熟培養で受精・発生可能な成熟卵子を得ることが可能となったが、体外培養により成熟させた卵子は、体内成熟卵子に比べて受精・発生能が低いことが問題であり、体外で成熟させた卵子の「質」を評価する方法の確立が必要である。 本年度は、当初の計画通り、マウスの体内成熟卵子の紡錘体の特徴を捉え、さらに体外成熟卵子との比較を行い、以下のことを明らかにした。1)紡錘体形成に必須である、中心小体周辺物質(PCM)の2点は、極体放出直後のMII期卵子で離れているが、時間経過に伴い2点が寄り、再び離れるという特徴的な動きを捕らえることができた。2)PCMは、卵細胞質中の微小管形成中心(MTOC)によって構成されるが、細胞質のMTOCの蛍光輝度を調べたところ、高い蛍光輝度を示すMTOC数の割合は、体内成熟卵子とゴナドトロピン成熟卵子では、50%程度であったが、自発的成熟卵子においては高い蛍光輝度を示すMTOCは観察されなかった。3)PCMが一時的に寄るタイミングで、高い蛍光輝度を示すMTOC数の割合が最も高くなった。4)受精・発生への影響を調べるため、体外受精・体外培養を行ったところ、PCMが一時的に寄るタイミングが受精・発生能の高いポイントであることが明らかとなった。5)受精能と相関のあるIntegrin mRNA発現解析の結果も4)の結果と一致した。以上の結果から、PCMおよびMTOCに着目した紡錘体形態の評価が、卵子の成熟能評価に有効であることが示された。 卵成熟過程における紡錘体形成・維持の分子メカニズムについて解析を行い、以下のことを明らかにした。1)Aktの活性は、減数分裂再開に伴って低下することが明らかとなった。2)Aktは微小管と結合していることが明らかとなり、Aktが紡錘体の形成・維持に直接的に関与している可能性が示された。
|