研究概要 |
昨年度ブタ卵においてイノシトール3リン酸受容体(IP_3R)は卵の減数分裂過程を通じて,常に同程度発現していること,しかしリン酸化IP_3R量は卵成熟に伴って著しく増加し,卵活性化後急激に減少することを明らかにした,そこで,今年度はIP_3Rの局在についてマウス・ブタおよびラット卵を用いて検討した.初めにブタ卵におけるIP_3Rの局在を検出する目的で2種類の抗IP_3R抗体(Rbt03およびCT-1)のどちらが至適であるかについて,免疫蛍光染色を行い検討したその結果,CT-1を用いた免疫染色のほうが,ブタ卵のIP_3Rの検出に至適であることが明らかとなった.そこで,CT-1抗体を用いて,ブタ卵を体外で成熟培養を行い,培養0時間(Germinal Vesicle, GV期),11時間,22時間(GVBD),33時間(MI期)および44時間(MII期)でそれぞれ卵を回収し,免疫蛍光染色に供した.その結果,GV期の卵では細胞質全体に不均一なIP_3Rの発現が認められ,減数分裂の進行に伴って細胞質に均一なIP_3Rの分布が認められるようになった,さらにMII期卵では,細胞膜にクラスター様のIP_3Rの蓄積が認められた.体内由来のMII卵においても,同様の傾向が認められた.一方,マウス卵においては,GV期で核付近に存在していたIP_3Rが減数分裂の進行に伴って,卵細胞質全体に均一に局在し,MII期の卵においては細胞膜付近にクラスター様のIP_3Rの蓄積が認められた.以上のことから,マウス・ブタ卵の両方において卵の成熟(減数分裂の進行)にともなってIP_3Rの局在は変化することが明らかとなった.また各kinase抑制剤処理によりIP_3Rの局在は変化したことから,IP_3Rの局在はkinaseにより制御されていると考えられた.
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