体細胞核移植によるクローン動物の作出は、未受精卵子には体細胞をリプログラミングを誘導する因子が存在していることを証明した。近年、ES細胞特異的な転写因子を体細胞に導入することにより直接多分化能を持つES細胞と同等な性質を持っiPS細胞を誘導できるようになったことから、核リプログラミングを詳細に解析することが可能となった。しかしながら、どちらの手法を用いてもその効率は極めて低く、その効率を向上させることが機能的な解析には必要となる。特に哺乳動物の未受精卵を用いた解析には、多数の未受精卵が必要となるため、比較的に多数の未受精卵を採取しやすいブタを用いることが有効である。そこで今年度は、マウスやウシよりも発生率が低いブタ体細胞核移植の効率的な技術の確立を行った。最初に、体細胞核移植だけではなくiPS細胞の作出においてもヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の有効性が示されていることから、阻害剤のスクリーニングを行った。その結果、活性化処理後の体細胞核移植卵を40nMのトリコスタチンAおよび1mMのバブプロ酸で48時間処理することにより無添加区と比較して胚盤胞への体外発生率が約2および3倍に向上し、得られた胚盤胞の細胞数も増加した。しかしながら、体細胞に同様な処理をしてもその効果はなかった。このことから、核移植卵を1mMのバブプロ酸で処理することにより効率的なブタ体細胞核移植の実験系を構築することができた。
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