第二減数分裂中期の未受精卵をレシピエント卵細胞として用いてクローン胚を作製しても、核リプログラミングの効率が極めて低く、体細胞ゲノムの脱メチル化などのエピジェネティックな変化が起こらないことがその原因の一つとして考えられている。そこで予め未受精卵にiPS細胞及びES細胞との融合によるリプログラミングに必要な既知の誘導因子を強制発現することでその効率の向上を目的とした。すなわち、iPS細胞樹立のための核リプログラミング誘導因子(oct3/4、sox2、klf4、c-myc)やES細胞との融合法で効果的なnanog、核リプログラミングの中心因子であるOct3/4の脱メチル化に関与するGadd45a遺伝子をマウスES細胞からクローニングし体外でmRNAを合成した後、体細胞核移植前2-3時間のブタ未受精卵に注入することで核リプログラミング誘導因子過剰発現卵を作製した。得られた強制発現未受精卵は、その発現レベル、初期胚の発生に影響を与えない発現レベルを確認した。至適化した核リプログラミング強制発現ブタ未受精卵を用いて体細胞核移植を行った。しかしながら、GFP mRNAを注入した対照区と比較してクローン胚の発生率を向上させることができなかった。また核移植された体細胞核のエピジェネティックな状態をHistoneH3-K9のメチル化を指標にして免疫染色して確認したが、高メチル化状態であったことから核リプログラミング強制発現卵は核リプログラミングを促進することはできなかった。
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