本研究では、分娩誘起方法の違いが分娩時の胎盤のアポトーシスに及ぼす影響を検討した。本年度は、体細胞クローン胚の移植により受胎した牛において、持続型コルチゾール製剤(トリアムシノロンアセトニド:TA)を用いて分娩誘起した際の分娩時胎盤節のアポトーシスを解析した。TAはデキサメサゾン(DEX)等のコルチゾール製剤に比較して血中に存在する時間が長い。これにより、TAを用いた分娩誘起は、分娩の開始前に胎子から分泌されるコルチゾールの分泌パターンを模倣できると考えられている。胎盤節は、体内受精胚の移植により受胎した牛における自然分娩時(対照)、体細胞クローン受胎牛のDEXあるいはTAによる誘起分娩時に採取した。DEX(5例、193±22/mm^2)に比較して対照(4例、26±8/mm^2)では胎盤節における二核細胞数が有意に減少した。TA(2例、236、169/mm^2)はDEXと同様の二核細胞数を示した。胎盤節におけるTUNEL陽性細胞の面積は、DEX(0.006±0.002/mm^2)に比較して対照(0.018±0.012/mm^2)で多い傾向を示した。TA(0.005、0.016/mm^2)はDEXと同様のTUNEL陽性細胞面積を示した。以上の結果から、体細胞クローン受胎牛における分娩誘起による分娩時胎盤節では、TAの投与による二核細胞数の減少やアポトーシス細胞の増加はみられなかった。今後、TAの投与量や投与時期等についても検討する必要がると考えられた。
|