研究概要 |
【研究目的】乳腺組織には、乳腺上皮細胞によって構成される立体構造である「乳腺胞」が無数に存在し、乳腺胞は泌乳ステージにより形成と崩壊を繰り返す。乳腺胞の増減は泌乳量に対して直接的な影響を及ぼすため、胞形成の調節因子を調べることは産乳量を増大させるための研究の土台として非常に有効であるが、未だ不明な点が多い。特に、性ホルモンによる胞形成の調節は、その可能性が示唆されているにも関わらず詳細なメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究は、ウシ乳腺上皮細胞(BMEC)の乳腺胞形成に及ぼす各種性ホルモンの影響や、性ホルモンレセプターの発現変動を調べ、乳腺の立体構造形成と性ホルモンとの関連性を明らかにすることを目的とした。 【本年度の結果概要】本年度は、乳腺胞形成にともなう各種性ホルモンレセプターの発現変動を検討するため、胞形成の誘導に用いる特殊なゲル(マトリゲル)の使用濃度の検討、さらに胞形成に要する培養時間および胞が崩壊するまでの培養期間を正確に把握したのち、胞の形成から崩壊までの期間における各種性ホルモンレセプターmRNAの経時的な発現変動を、リアルタイムPCR法により検討した。 乳腺胞は培養開始後1日目に形成が確認され、数日間維持されたのち培養7日目から胞の崩壊が観察された。エストロジェンレセプターαとβ(ER-α, β)は、それぞれが全く異なる発現パターンを示し、ER-αは漸時的に発現が上昇したのに対し、ER-βは培養7日目以降のみに発現が上昇した。プロジェステロンレセプター(PGRMC-1)は、培養3日および5日目に発現の減少が観察された。以上の結果から、エストロジェンやプロジェステロンなどの性ホルモンの及ぼす作用は、胞の形成および崩壊ステージによって変化する可能性が示唆された。
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