研究課題
アピコンプレックス類に属する原虫は形態的・遺伝学的に共通の特徴を持ち、家畜に重篤な症状、経済的損失を引き起こす。研究代表者らが小麦胚芽無細胞蛋白質合成系を利用することで確立した原虫酵素、特に細胞内シグナル伝達で中心的役割をなすプロテインキナーゼ(PK)の発現・精製系を用いて、本研究では原虫PKの基質蛋白質同定を目指した。今年度は主に、Ca^<2+>シグナルに関連することが予想されるトキソプラズマ原虫のPKであるTgPKA-c(cAMP-dependent protein kinase catalytic subunit)とTgCaMKrk(CaMK-related kinase)の解析を行った。トキソプラズマ原虫のPKA-cについてはいまだ報告がなかったが、今回その遺伝子を同定し、その薬剤感受性について解析を行った。また、未同定であったregulatory subunit(TgPKA-r)を同定し、原虫内で過剰発現されることで原虫の宿主細胞内での増殖が低下することが明らかとなった。また、in vitroでPKA-cがPKA-rをリン酸化することが明らかとなった。次に、TgCaMKrkでは、我々が同定したマラリア原虫の唯一のCa^<2+>/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼであるPfPK2の相同遺伝子として機能解析を行った。TgCaMKrkにはregulatoryドメインが保存されていなかったためCa^<2+>/カルモジュリン依存性は観察されなかったが、侵入動力装置であるglideosomeの構成因子をin vitroでリン酸化することが明らかとなった。これらの解析結果は、原虫の遺伝子発現機構、シグナル伝達機構の根本的な解明、抗原虫薬・原虫ワクチンの開発に有用な基礎的データの蓄積につながると考えられる。
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