研究課題
本研究では、計算科学およびバイオインフォマティクス手法を用いて、インフルエンザウイルスの抗原変異に伴う抗原構造の変遷をアミノ酸変化と立体構造の変化から明らかにすることを目的とし、以下の研究を遂行した。また、過去にヒトで流行したインフルエンザウイルスの抗原変異解析の結果に基づき、本年度パンデミックを起こした新型インフルエンザ(2009H1N1)ウイルスの抗原変異予測を試みた。1.アミノ酸変異履歴の作成(1)データベース(DB)解析によるアミノ酸変異履歴の作成過去にヒトで流行を起こしたインフルエンザウイルス(H1N1, H2N2, H3N2)のアミノ酸置換の変遷を時系列的に解析し、変異履歴を作成した。(2)変異株のHA蛋白質の構造構築ホモロジーモデリング法を用いて、ヒトで流行を起こしたインフルエンザウイルス(2009H1N1ウイルスを含む)の抗原変異株のHA蛋白質構造を構築した。2.2009H1N1ウイルスHAの抗原構造の解析上記(2)で構築したホモロジーモデルを用いて、1918年のH1N1パンデミック株、その子孫である2007年のH1N1ワクチン株、2009H1N1の原型株でHAの抗原構造を比較した。2009H1N1と1918H1N1のHA抗原領域のアミノ酸は、よく保存していることが分かった。特に、SaおよびSb領域は構造的にも、よく似ていた。したがって、ヒト集団間で2009H1N1ウイルスも、1918H1N1ウイルスと同様の抗体で選択されると仮定した場合、2009H1N1でも、これらの領域に変異が蓄積し、同様の抗原変異が起こる可能性が予想される。DB解析では、実際に、1918H1N1と同様のアミノ酸変異を起こしているvariantが、すでに分離されていることが分かった。また、糖鎖付加を伴う抗原変異についても、1918H1N1の流行開始当初と同様の部位で起こる可能性が予想された。
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PLoS One 5(1)
ページ: e8553
Biochem Biophys Res Commun (in press)
J.Virol (in press)