本研究は、試験管内増幅法(QUIC法)を用いて異常型リコンビナントプリオンタンパク(rPrP-res)を作成し、これを免疫原としてマウスにおける免疫反応を調査することで、新たなプリオンワクチンあるいは治療法開発へ繋げることを目的としている。 昨年度までに、各種動物rPrPの精製を行い、特にQUIC法におけるマウスrPrP(rmoPrP)を用いたrmoPrP-resの作成および保存条件を決定した。 今年度では、抗PrP抗体産生誘導に着目した。まず、作成したrmoPrP-resをBALB/cマウスに投与し、免疫寛容機構を克服できるか検討した結果、若干ではあるが特異的IgG価の上昇を検出した。更に、rmoPrP-res投与により誘導されるIgG抗体について調査するため、PrP欠損マウスを用いrmoPrP-resを投与した。その結果、有意なIgG価の上昇が検出された。産生されたIgGは、rPrPとrPrP-resの両方あるいはrPrPを主に認識するか、マウス個体によって異なっていた。またこの抗血清は、抗プリオンエピトープ領域を含むアミノ酸90-109、131-154および219-231のペプチドのいずれとも強く反応しなかった。IgGサブクラスは、主にIgG1およびIgG2b価が高く、rPrP-resを認識するIgGは、主にIgG2bであった。一方、我々の予想に反し、BALB/cマウスにrmoPrPを投与した結果、有意な特異抗体産生が認められ、これらの抗体は、rmoPrP-resを強く認識しなかったが、上記3種のペプチドと反応を示し、ワクチンへの応用の可能性が示唆された。 今後、IgGサブクラスあるいは認識エピトープの相違について異常型プリナン増殖への影響について検討する必要が考えられた。これらの結果は、効率の良いプリオンワクチンおよび治療法の開発に途を開く礎となるものである。
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