研究課題
狂犬病ウイルス街上毒1088株とマウス末梢感染において弱毒化したN型糖鎖追加(R196S)変異株(1088-N4#14株および1088-N30株)について、免疫組織化学的解析を経時的に行った。接種後5日目では、いずれの接種群でも症状が認められないにもかかわらず、大脳皮質にウイルス抗原が認められた。接種後8および11日目では、1088株感染ではウイルス抗原が脳全域に分布していたが、1088-N30株感染では、ウイルス抗原は大脳皮質や視床の一部に限局したままであった。1088-N4#14株ではそれらの中間像を示した。昨年度までの結果とあわせると、N型糖鎖追加変異株は依然neuroinvasiveであるが、中枢神経系に侵入する過程で宿主免疫を強く誘導してしまうために、脳内に侵入後はその拡がりが抑制されると考えられた。以上の結果について、報告を行った(Virus Res.165 : 36-45, 2012)。一方、固定毒で認められるN型糖鎖を追加した1088株Gタンパク質発現プラスミドを各種構築し、G遺伝子欠損狂犬病ウイルスを用いたシュードタイプアッセイを行ったところ、その追加は培養細胞におけるビリオン産生を促進させること、特に第194位および247位への追加では顕著であることが分かった。さらに再度1088株のNA細胞での連続継代・クローニングを行ったところ、R196S変異株のみならずD247N変異株(第247位へのN型糖鎖の追加)や新規のN型糖鎖追加変異株が数クローン得られ、いずれもマウス神経系NA細胞での増殖性が亢進していた。従って、Gタンパク質N型糖鎖追加の細胞馴化への関与について普遍性が示唆された。また、各種グリコシダーゼ阻害剤を使用した解析により、第194位および247位へのN型糖鎖追加によるビリオン産生亢進には、N型糖鎖の成熟度が関与していることが示唆された。
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Virus Research
巻: 165 ページ: 34-45
10.1016/j.virusres.2012.01.002