研究課題
昨今の豚由来インフルエンザ感染の流行で痛感したようにA型インフルエンザ感染症の予防・治療対策が早急に必要である。インフルエンザウイルスHA蛋白の開裂を特異的に防ぐことでウイルスの感染を効果的に抑制することと、通常のIgG抗体より優れた抗原特異性と親和性を持つと報告されたラクダ科動物のH鎖抗体の特徴(低分子・抗原特異性・耐熱性)を生かした、ウイルス感染症の治療研究を意図した。インフルエンザHA抗原(A/Beijing/262/95株)を1週間隔で3回混合接種し、免疫応答を十分高めたラマの血液を採取し、血清および末梢リンパ球を分離した。免疫前、1回、2回および3回目免疫後の血清を用いたHI試験では、HI(-)、HI(+)1:32、HI(+)1:1,024、HI(+)1:1,024であり、十分な免疫応答が誘導されていた。また、90℃で30分間熱処理後のHI試験では、それぞれHI(-)、HI(-)、HI(-)、HI(+)1:8であり、熱処理によるタンパク変性が抗原認識能が顕著に低下するが、免疫後期においては僅かながら熱耐性の抗体分子が産生されていた。通常のIgG1およびH鎖抗体のIgG2とIgG3を、プロテインAおよびプロテインGを用いて精製し、HI試験を行った結果、それぞれ50nmol、360nmol、350nmolの濃度でHI(+)であった。熱処理後は、HI(-)、1,440nmol、1,400nmolであり、90℃30分処理でもタンパク変性しない抗体分子であることを確認した。VHH抗体遺伝子特異的Lam07, Lam08, VH-backA6 primersを用いて400bp前後のPCR産物が得られ、そのラマH鎖抗体遺伝子断片をpCANTAB5Eファージミドベクターに導入し、大腸菌TG1およびM13KO7ファージを用いて抗体分子を提示するファージライブラリを作製した。洗浄やファージ数の条件を最適化し、数回のバイオパンニングを行い、HA抗原と特異的に結合し不活化しうる強いアフィニティーを持つVHHクローンの単離を試みている。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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