研究課題
フラビウイルス脳炎は、重症化し髄膜炎・脳炎を起こすと致死性が高く、回復しても患者の多くは後遺症が問題となるが、その機序については不明な点が多く特異的な予防・治療法は確立されていない。昨年度の本研究成果において感染個体のIL-10やTNFα応答が重症化に関係していることが示唆された。そこで本年度の研究では宿主側要因としてTNF、IL-10に着目した解析を行った。1)ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)Oshima株および日本脳炎ウイルス(JEV)S982株をIL-10 B6 KOマウスに感染させたところ、両ウイルスともにB6マウスにくらべて致死性の増加がみられた。しかしながら、両ウイルスとも中枢神経組織内のウイルス量はB6マウスにくらべて有意な差がなかったことから、致死性の増加すなわち重症化には感染個体の免疫応答が関わっている可能性が示唆された。2)一方、TBEV Sofjin株およびJEV JaTH160株感染では、IL-10 B6 KOマウスとB6 KOマウスに致死性の違いがなかったため、これらのウイルス感染による重症化にはIL-10応答の影響は少ないものと思われた。3)TBEV Oshima株およびJEV S982株をTNFR1 KOマウスに感染させたところ、TBEV Oshima株感染では致死性の増加がみられたが、JEV S982株感染では致死性に有意な差がなかった。したがって、TBEV Oshima株感染ではTNF応答が関連した感染応答が重症化に影響を及ぼしている可能性が示唆された。4)一方、TBEV Sofjin株およびJEV JaTH160株感染ではTNFR1 KOマウスとB6 KOマウスに致死性の違いがなかったため、これらのウイルス感染による重症化にはTNF応答の影響が少ないものと思われた。
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Viral Immunology
巻: (In press)(掲載確定)
Journal of Veterinary Medical Science
巻: 72 ページ: 391-396