本研究では、重度脊髄損傷犬に対する歩行トレーニングの効果を評価し、最終的にはトレーニング機能を装備した犬用車イス(LTカート)を開発することを目的としている。 H22年度は、脊髄損傷ラットモデルを使用し、LTカート装着群、通常カート装着群、および無治療群における、後肢運動機能の回復をBBBスケールにより評価した。また、神経線維の修復過程のモニタリングとして、血中ニューロフィラメントの継時的測定を追加した。現在までに各群6匹ずつのラットにおける評価を実施した。LTカート装着群の後肢運動機能の回復は無治療群と比べ優れており、BBBスケールは治療後約3日目(損傷後10日)より改善傾向を示した。無治療群では損傷後約12日目より回復傾向を示したが、通常カート群ではカート装着後約8日目(損傷後15日)まで回復を示さず、最終的な回復程度も無治療群よりも低かった。このことより、ラット脊髄損傷モデルにおいて、LTカートの装着は、麻痺後肢筋肉の歩行訓練として効果があることが示唆された。さらに通常カートの使用は、後肢の運動機能回復を遅延させる可能性があり、後肢筋群の筋原線維タイピングの結果と合わせて評価する予定である。現在、血中ニューロフィラメントの測定および後肢筋群の筋原線維タイピングを進めている。また、犬用LTカートの改良を重ねているが、軽量化および走行性などの問題からまだ臨床試験を開始するには至っていない。
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