大腸菌菌体を用いたSalmonella Enteritidis (SE)の不活化経口ワクチンの開発を目的として、大腸菌菌体表面に組換えタンパク質を効率的に発現する発現プラスミドベクターを構築した。菌体表面におけるアンカータンパク質として、C末端に組換えタンパク質を融合・発現する大腸菌リポタンパク質のリーダー配列と外膜タンパク質(Lpp-ompA)、およびN末端融合発現にはサルモネラのV型分泌装置のβドメインタンパク質(MisL)を選択し、それぞれコードする遺伝子を組み込んだ発現プラスミドベクターを作製した。発現プラスミドベクターを評価するため、立体構造により機能性に明らかな変化が生じるタンパク質として既知の抗原を認識するニワトリ型一本鎖抗体(scFV)をコードする遺伝子を用いた。C末端発現プラスミドベクターを組み込んだ大腸菌は低温下(25℃)での発現誘導により、scFVの発現は確認できたものの、その機能性、および菌の生存率の減少が認められた。一方、N末端発現プラスミドベクターでは37℃の培養温度下でも良好な生存性を示し、高率なタグタンパク質(6His)の表面発現が確認されたが、高分子量のタンパク質については菌体外に表出されるまでに分解されている可能性が確認され、表出前の立体構造の形成が菌体外への発現を阻害している可能性が考えられた。いずれの発現プラスミドベクターにおいても培養条件、発現誘導時のジスルフィド結合の抑制・菌の生存下におけるリフォールディング条件など発現条件について詳細な検討が必要であると考えられた。
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