大腸菌菌体を用いたSalmonella Enteritidis (SE)の不活化経口ワクチンの開発を目的として、平成21年度に構築したサルモネラのV型分泌装置のβドメインタンパク質(MisL)を大腸菌菌体表面に組換えタンパク質を発現するアンカータンパク質として利用したN末端融合発現プラスミドベクターに、経口ワクチンにおけるアジュバント効果が期待できるコレラ毒素のBサブユニット(CTB)を挿入し、その発現と、機能性について検討した。Vibrico choleraeゲノムDNAからCTBをコードする遺伝子を増幅し、N末端融合発現プラスミドベクターのマルチクローニングサイトに挿入した後、大腸菌UT5600株(OmpT-)に形質転換した。CTB分子内に形成されるジスルフィド結合の発現動態への影響について検討するため、形質転換体を還元、非還元条件下で培養・誘導を行った。免疫蛍光染色では大腸菌表面へのCTBの発現が観察され、また、Western blottingでは菌体外膜画分へのCTBの偏在が認められ、特に還元条件下で顕著に増加していた。蛍光標識したganglioside GM1 (GM1)を反応させたところ、結合したGM1による蛍光強度の増加が認められた。還元条件下で得た菌体をリン酸緩衝液で透析した後同様の検討を行ったが、軽微な増加が認められたものの有意差は見られなかった。本研究で構築した大腸菌菌体表面への組換えタンパク質のN末端融合発現系は、立体構造を形成するタンパク質の表面発現が可能であり、また、CTBはGM1と結合するために五量体を形成する必要があることから、多量体を形成するタンパク質を機能性を有して発現させることが可能であることが明らかになった.今後はSE抗原タンパク質を共発現させ不活化菌体を作製、ニワトリに投与し、免疫学的手法を用いて詳細に検討する必要があると考えられた。
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