大腸菌菌体を用いたSalmonella Enteritidis(SE)の不活化経口ワクチンの開発を目的として、平成22年度に構築した、経口ワクチンにおけるアジュバント効果が期待できるコレラ毒素のBサブユニット(CTB)を菌体表面に融合発現するプラスミドベクターを用いて、菌体表面に組換えタンパク質を発現した大腸菌の不活化法、および鶏に対する免疫誘導能について検討した。 不活化処理によるCTBの機能性の変化は、平成23年度に構築したGM1-ELISA法を用いてGM1 gangliosideに対する結合活性として評価した。菌体表面にCTBを発現させた大腸菌に、ホルムアルデヒド、加熱、あるいはアセトンによる処理を行ったところ、未処理の菌体と比較して、アセトンを除くいずれの条件においてもGM1に対する結合活性の低下が認められた。平成23年度に構築した、SEワクチン候補抗原としてfliC、SipD、あるいはSipCをそれぞれCTBと融合発現するプラスミドベクターを導入した大腸菌について、アセトンを用いて不活化し、CTBの機能性の変化について検討したところ、未処理の菌体と比較してGM1に対する結合活性の低下は認められなかった。CTBとSE抗原タンパク質(fliC、SipC)を表面に融合発現させた不活化菌体を作製し、7日齢の鶏に14日毎に2回経口投与後、小腸粘液中のCTB特異的IgA抗体価を測定したところ、対照群に比較して軽微な増加が認められたものの非特異的な反応が強く有意な差は見られなかった。 本研究年度に得られた知見から、アセトンを用いることにより発現タンパク質に対する影響を最小限に留めた生菌の不活化が可能であることが示唆された。また、今後、不活化菌体の鶏への投与菌数、投与頻度・期間について最適化する必要があると思われた。
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