研究概要 |
短鎖脂肪酸、特に酪酸は腸粘膜細胞分化促進や癌細胞の増殖抑制など多様な生理活性を有しており、静脈投与や経腸投与した酪酸の腸管への効果が明らかにされ始めている。しかし、経口投与による腸管への効果は不明であり、本研究で腸管障害抑制効果が明らかにされれば食品成分である短鎖脂肪酸の新しい生理活性研究に発展するものと考えられる。 本研究では、新しい機能性食品として酪酸のトリグリセライドでprodrugであるtributyrin (propane-1,2,3-triyl tributyrate)の経口投与を行い、in vivoにてエンドトキシン誘発等による腸管障害抑制効果の有無を検討する。生理的状態下と炎症下でのtributyrin経口投与による腸粘膜integrityに及ぼす効果をdiamine oxidase(DAO)活性やサイトカイン濃度測定、病理組織学的解析および免疫組織化学的解析により明らかにする。 Tributyrin経口投与後約1.5時間で盲腸手前にまでtributyrinが移動することを確認した。このことから、経口投与によるtributyrinは、小腸には直接働くが結腸には血行性に働く可能性が示唆された。またtributyrin1.0g/kgの経口投与により門脈血中酪酸濃度が投与1時間後に2.4mM、2.5時間後に0.7mMまで上昇しており、in vitroで有効であった0.5mM以上が確保されていた。DAO活性はコントロール群と比較して有意な変化ではないが活性値が上昇していた。 以上より、生理的状態下でのtributyrin経口投与は血中酪酸濃度を上昇させ腸管integrityを維持する可能性が示唆された。現在、炎症下でのtributyrin投与効果を明らかにするため予備実験を開始している。
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