研究概要 |
短鎖脂肪酸、特に酪酸は腸粘膜細胞分化促進や癌細胞の増殖抑制など多様な生理活性を有しており、静脈投与や経腸投与した酪酸の腸管への効果が明らかにされ始めている。しかし、経口投与による腸管への効果は不明であり、本研究で腸管障害抑制効果が明らかにされれば食品成分である短鎖脂肪酸の新しい生理活性研究に発展するものと考えられる。 本研究では、新しい機能性食品として酪酸のトリグリセライドでprodrugであるtributyrin (propane-1,2,3-triyl tributyrate)の経口投与を行い、in vivoにてエンドトキシン誘発による腸管障害抑制効果の有無を検討する。生理的状態下と炎症下でのtributyrin経口投与による腸粘膜integrityに及ぼす効果をdiamine oxidase (DAO)活性やサイトカイン濃度測定、病理組織学的解析および免疫組織化学的解析により明らかにする。 21年度は、生理的状態下でのtributyrin経口投与が血中酪酸濃度を上昇させ腸管integrityを維持する可能性を明らかにしたが、22年度は、炎症下でのtributyrin投与効果についての検討を行った。LPS投与群と比較してtributyrin+LPS群は24時間の生存率を有意に改善した。しかし、炎症のマーカーとして計測した腸管の長さは、2群間で有意な変化は認められなかった。また、HE染色にてLPSによる腸管障害が認められたが、LPS濃度による腸管障害の違いは明らかではなく、tributyrin+LPS群においても明らかな障害抑制は認められなかった。現在、組織障害のスコア化を検討中である。
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