研究概要 |
我々は視覚誘発電位(VEP)を用いた犬の視力検査法を開発することを目的に本研究を実施している。犬においては,VEPと視力に対する報告が非常に少ない。本年度は犬におけるVEP,および視力において大きな要因である屈折の研究を実施した。酪農学園大学における実験ビーグル犬を用い,フラッシュ刺激を用いたVEP(fVEP)とパターンリバーサル刺激を用いたVEP(pVEP)記録,さらにこれらの対象に検影法を用いた屈折検査を試みた。(1)fVEPの結果より,犬におけるfVEPの基礎データを得ることが出来た。我々の測定法において,犬のfVEPでは左右差はみられなかった。また,散瞳によりフラッシュ刺激が眼内に届く方が,得られる応答が大きく,異常を判定しやすかった。(2)pVEPの結果より,犬においても人に似た応答を得られることがわかり,刺激パターンサイズを変化させることで,対象を認識できる閾値が判明した(人の視力では,0.07に相当)。しかしながら,犬と人では網膜の解像度が異なるため,単純に人の視力と比較することは困難である。今後,麻酔深度やモニターの固視方法などを検討することで,より詳細なデータが得られると考えられる。(3)屈折検査の結果より,我々が本研究で用いるビーグル犬の多くは正視(±0.5D)の屈折度を持つが,個体によって様々であり,また加齢によって近視化することが明らかになった。ビーグル犬の屈折度に対する報告はされておらず,今回得られた基礎データは動物実験に従事する者にとっては有用となる可能性がある。 本年度で得られた(1)~(3)の結果を基に,次年度は視力測定のためのpVEP記録時に屈折調整を行い,より正確なデータを解析することで,犬の視力検査法の開発に近づくと考えられる。
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