研究概要 |
国内におけるCd土壌汚染問題が再燃し,あらたな修復法として,ファイトレメディエーションが試験的に実施され始めた.しかし,その効果は土壌などの環境により大きく左右され,農地への利用は慎重に行わなければならない.そこで土壌中のCdの動態を正確に把握することが,効率的な技術の確立には必要であると考えた.特に,根圏土壌とされている植物根表面やその近傍土壌中のCdの局所的形態やその移動を明らかにはできていない.本研究では根圏土壌の重金属の濃度および形態を把握するために,根箱を用いて,根からmm単位でCd形態の分布を把握することを目的とした.その方法として,従来の溶液化学と共に分光学的手法を用いることとした. 今年度の成果として,1)先ず植物根からmm単位で土壌を採取可能な根箱を作製した.植物根の隔離や土壌水分量の管理などの問題点はあったが,作製した根箱により根圏土壌のCd分布を評価できると判断した.2)汚染土壌である灰色低地土を入手し,イネ科植物であるオオムギとマメ科植物であるキバナルーピンを28日間生育させ,形態分別により根圏土壌のCd形態を分析した.その結果,(1)植物種により,乾物重あたりのCd吸収量が大きく異なった.バイオマスは小さいが,Cd吸収量はキバナルーピンの方が大きかった.(2)根の近傍の土壌pHがキバナルーピンの栽培では変化しなかったが,オオムギの栽培では上昇した.(3)植物根-土壌におけるCdの動態として,マスフローと形態変化が確認できた.土壌のCd形態変化として,キバナルーピンの栽培では可溶化が見られたが,オオムギの栽培では難溶化が確認できた.
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