研究概要 |
Cdによる土壌汚染に対する修復法として期待されているファイトレメディエーションの効果は土壌などの環境により大きく左右され,農地への利用は慎重に行わなければならない.根圏土壌とされている植物根表面やその近傍土壌中のCdの動態は大部分の非根圏土壌とは異なるため,正確に把握する必要がある.本研究では根圏土壌の重金属の濃度および形態を明らかにするために,根箱を用いて,根からmm単位でCd形態の分布を把握することを目的とした.昨年度,灰色低地土にイネ科植物であるオオムギとマメ科植物であるキバナルーピンを28日間栽培した結果,根の近傍で土壌pHに変化があった.その結果,根近傍のCd形態(水溶態,交換態,無機結合態など)に土壌pHが大きく影響していることが明らかとなった.そこで,今年度は灰色低地土のpHを硫酸アンモニウム,消石灰を用いて人為的に変化させ,Cdの形態変化を逐次抽出法にて確認した.また灰色低地土中の亜鉛(Zn)や銅(Cu)の濃度が高いため,植物へのCd吸収に大きく影響すると考え,CdとともにZnとCuも同様に分析した.その結果,pHが高くなるとCd水溶態,交換態が激減し,無機・有機結合態が増加することがわかった.昨年度は有機結合態に関して分析は行わなかったが,形態の評価として有機結合態まで把握する必要性が示された.ZnではCdと同様の傾向が水溶態,交換態,有機結合態ではみられたが,無機結合態は逆にpH上昇により減少した.Cuは有機結合態が多かったため,あまりpH変化による形態変化がみられなかった.以上の結果から,根圏土壌のpHを詳細に把握し,その変化による影響と植物へのCd吸収による影響とを区別して評価することが今後の考察として重要であると考える.
|