研究概要 |
根圏土壌とされている植物根表面やその近傍土壌中のCdの動態は大部分の非根圏土壌とは異なるため,正確に把握する必要がある.本研究では根圏土壌の重金属の濃度および形態を明らかにするために,根箱を用いて,根からmm単位でCd形態の分布を把握することを目的とした.またCdによる土壌汚染は,通常,複合汚染として問題となっているため,他の重金属(Zn,Cu)による影響も検討した. 今年度は,灰色低地土にイネ科植物のオオムギとマメ科植物のキバナルーピンを生育させ,土壌-植物根のCd動態とともにZnとCuの動態を把握した.オオムギを栽培後の土壌では,水溶態Cd,ZnおよびCuは全層で変化したことから,吸水によるマスフローが確認できた.また,根伸長域(R.C.)で土壌pHの上昇とCd,ZnおよびCuの形態に変化がみられた.Cdでは,交換態が減少し,無機結合態および有機結合態が増加したのに対し,ZnとCuでは交換態,無機結合態および有機結合態が減少した.以上から,オオムギのCd,ZnおよびCuの吸収メカニズムとして,Cdでは主にマスフローが,ZnとCuではマスフローと可溶化が考えられた.また,R.C.での土壌pHの上昇に対して,Cdのみ難溶化が見られた.一方,キバナルーピンでは栽培が上手くいかず,根圏土壌の土壌中のCd,ZnおよびCuの形態分布を十分に捉えられなかった. 植物へのCdの吸収に対するZnとCuの競合を評価するため,Cdの単汚染とCd,ZnおよびCuの複合汚染させた灰色低地土を用いてポット試験を行った.その結果,オオムギのCd吸収に対して,ZnとCuによる拮抗作用が,キバナルーピンでは促進作用が見られた. また根圏土壌のXRFとXAFS分析に必要な土壌薄片の作製に関して,今後より改善が必要であるが,測定可能なスケールの薄片を作製することができた.
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