本研究は、非食料資源であるセルロースを基質とした選択的アセトン・ブタノール生産システムの構築を目的とし、セルロース資化細菌のスクリーニングおよびセルロース資化性Clostridium属細菌とアセトン・ブタノール生産菌との混合培養を行った。 結晶性セルロースを唯一の炭素源としてスクリーニングを行い、酢酸、酪酸、エタノールを発酵産物とする菌株群を取得した。次に、既知のセルロース資化菌C.thermocellum、C.cellulovorans、C.cellulolyticumと新規に取得したセルロース資化菌を用いてアセトン・ブタノール生産菌と混合培養を行った。その結果、セルロース資化菌としてC.thermomcellum、ブタノール生産菌としてC.saccharoperbutylacetonicumを用いた場合最大のブタノール生産量を示し、培養12日間で40g/Lの結晶性セルロースを基質として7.9g/Lの生産性を示した。また、本培養系ではアセトンがほとんど生産されず選択的にブタノールのみを生産した。また、ろ紙、新聞紙、稲わらを基質とした場合でもそれぞれ8.9、4.3、2.4g/Lのブタノールを生産した。 以上、本年度では酵素剤を用いない生物的プロセスのみによるセルロースを基質としたブタノール生産系を確立することができた。本研究により、運輸燃料として利用可能なブタノールを非食料資源からより安価で高効率に生産することが可能となることから、循環型社会の形成の一端を担う技術として期待される。
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