本研究は、非食料資源であるセルロースを基質の中で特に稲わらを基質とした選択的アセトン・ブタノール生産システムの構築を目的とした。セルロース資化性Clostridium属細菌とアセトン・ブタノール生産菌との混合培養時におけるヘミセルラーゼ等酵素剤の添加ならびに宿主ベクター系が構築されているアセトン・ブタノール生産菌におけるセルラーゼ・ヘミセルラーゼ発現株の取得を行った。 本培養系では稲わらを基質にした場合、選択的に2.4g/Lのブタノールを生産した。しかしながら、結晶性セルロースを基質にした場合と比較してその生産量は30%程度と低かった。これは稲わら中にはヘミセルロースが含まれているためにセルラーゼのみでは基質の分解が起こりにくいためと推測された。そこで、混合培養系中にAspergillus由来のヘミセルラーゼを添加した結果、ヘミセルラーゼ添加量の増加にともないブタノールの生成量が増加し700U/g biomass添加した場合4.5g/Lのブタノールを生産可能であった。一方、Aspergillus由来のセルラーゼを酵素剤として添加した場合、添加濃度の増加に関わらずその生産量は低いままであった。このことから、稲わらからのブタノール生産にはヘミセルラーゼが必須であることが明らかになった。さらに、ヘミセルラーゼ発現株を取得し、さらなる高効率混合培養系の開発も試みた。 以上、本年度では酵素剤としてヘミセルラーゼを添加することで生物的プロセスのみによる稲わらを基質としたブタノール生産系を確立することができた。本研究により、石油代替燃料として利用可能なブタノールを非食料資源からより安価で高効率に生産することが可能となることから、循環型社会の形成の一端を担う技術として期待される。
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