酸性土壌では、強酸性、アルミニウム・重金属などの金属過剰害、リン酸の不溶化によるリン不足、窒素固定菌の活性低下による窒素不足などが複合して植物の生育阻害が起こり、農業上の深刻な問題となっている。これまでに我々は酸性土壌適応植物と微生物群が形成する植物・微生物共生体に着目し、ベトナムのCan Tho大学、タイの王立酸性硫酸塩土壌試験場と共同研究を行い、タイ・ベトナムの酸性土壌に自生する植物を採集し、その植物表面および内部から、環境修復や食糧増産などへの応用が期待される微生物群を取得してきた。これらには新規分類群に属する菌株が多く、それらの利用・制御のためにも、機能解析とともに分類学的検討が必要であるため、本年度は、これら有用微生物の機能の解析をさらに進めるとともに、新規分類群に属すると予想される微生物の分類学的性状について検討を加え、新種の提案を行った。 1) 土壌・植物根圏の中性化菌 ベトナムおよびタイの酸性土壌に自生する植物から、アンモニアの生成により周囲を中性化する菌株を得た。これらの一部はBurkholderia属に属していると推定され、類縁する基準株との分類学的性状を詳細に検討し、本菌株を新種Burkholderia acidipaludisとして提案した。 2) 酸耐性窒素固定菌 ベトナムの酸性土壌に自生する植物から、強酸性条件下においてもアセチレン還元活性を示す菌株を得た。これらはBurkholderia属に属していると推定され、類縁する基準株との分類学的性状を詳細に検討し、本菌株を新種Burkholderia heleiaとして提案した。
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