研究課題
近年、スフィンゴ脂質の一つであるセラミド(Cer)が動脈硬化のリスクファクターとなっている事が示唆された。しかしながら、これまでスフィンゴ脂質代謝とメタボリックシンドロームの関係を詳細に研究した例は無い。本研究では、Cerを中心としたスフィンゴ脂質代謝が、メタボリックシンドロームの発症にどの様に関わっているかを動物個体レベルから細胞レベルまで解析し、その分子メカニズムを明らかにする。昨年までの研究でスフィンゴミエリン合成酵素の一つSMS2を欠損したマウスは、高脂肪食誘導性肥満、インスリン抵抗性、脂肪肝形成に対して抵抗性を示す事を見いだしていた。また、その原因の一つとしてスカベンジャーレセプターCD36の機能発現にSMS2が関わっている可能性を見いだしていた。本年度は、本研究課題最終年度であり、細胞レベルの実験でこれらのメカニズムに迫る事が期待された。その結果、COS7細胞を用いた細胞レベルの実験で以下の3つの興味深い事実を見いだした。それは、(1)SMS2が細胞膜脂質マイクロドメインに存在する事、(2)SMS2とCD36が直接結合する事、(3)SMS2は細胞膜上でスフィンゴミエリン合成能を持つ事、である。これらの結果は、SMS2が細胞膜上で脂質マイクロドメインのメンテナンス分子として働き、マイクロドメイン上に存在する様々な蛋白質分子の機能制御に関わっている可能性を強く示唆する。本研究で得られた成果は、これまで知られていなかった、マイクロドメインの細胞膜上での構造/機能調節の存在を示しており、大変画期的な知見を含んでいると考えられる。
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