研究概要 |
2008年度までの実験において、オーキシン様除草剤である2,4-Dを3μMの濃度でシロイヌナズナの根に処理することにより、根の分裂組織において細胞死が生じることが観察されたが、オーキシンであるIAAを処理することによっては、細胞死は観察されなかった。そこで、2009年度は、この特定の現象である細胞死に焦点を当てながら、マイクロアレイ解析を行った。昨年度と同じ濃度でIAA処理および2,4-D処理を行った後、マイクロアレイにより両遺伝子発現の比較解析を行った。その結果、2,4-D処理特異的に、386個の遺伝子が発現上昇し、また、1700個の遺伝子が発現低下した。さらに、これらの遺伝子に対し、遺伝子オントロジーによる機能推定を行ったところ、2,4-D処理特異的に発現上昇が見られた遺伝子の多くは、細胞死や細胞骨格に関連したものであった。現在、これら遺伝子の2,4-D処理における機能的な意義を理解するための実験を行っている。 一方、上記の実験と同時並行に、皮層組織にあるPIN2タンパク質が、どの様にしてオーキシン輸送を制御しているかを明らかにするための実験も部分的に行った。その結果、野生型の植物では、皮層細胞におけるPIN2タンパク質は細胞の基底側へ局在化されるが、この局在化がオーキシンの根伸長域への逆流を押さえる働きがあることが明らかとなった。また、この局在化機構は、根が最適な重力屈性機構を得るために必要なものでもあった。以上のPIN2タンパク質に関連する結果は、最近、Plant Cell誌に暫定的ではあるが掲載が受諾された。
|