糖新生律速酵素G6Pase遺伝子の発現は、インスリンやグルカゴン等のホルモンによって、転写レベルで厳密に制御されている。FOXO1はインスリンシグナルによって負の制御を受ける転写因子であり、G6pase遺伝子発現におけるインスリンによる転写抑制に主要な役割を果たしている。私はこれまでに、G6Pase遺伝子の転写調節機構について解析を行い、転写活性を抑制する新たな因子として、HMGA1(High Mobility Group A1)を見出した。HMGA1は、DNA結合ドメインであるAT-hookを3カ所持つ、約20kDaのタンパク質である。本研究ではHMGA1の糖代謝における機能について、FOXO1との相互作用を中心に明らかにすることを目的とした。 【研究の成果】インスリンシグナル伝達経路は、線虫からマウス・ヒトまで保存されている。そして、近年の線虫の分子遺伝学的研究成果から、Daf2(ヒト・インスリン受容体)が寿命を負に、Daf16(ヒト・FOXO1)が寿命を正に制御することが確立されている。我々はデータベース検索を行い、ヒトHMGA1と高い相同性を保持するオルソログY116C8A(以下、nHMGA:nematodaHMGA)を見出し、クローニングに成功した。さらに、寿命という表現型を指標に、線虫の分子遺伝学を用いて、nHMGAとDaf2(ヒト・インスリン受容体)、Daf16(ヒト・FOXO1)との機能的相関関係を明らかにした。
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