CMP-Sia合成酵素(CMP-Sia synthetase ; CSS)は、糖鎖の非還元末端に修飾するSiaの発現に必須の酵素で、Mg^<2+>の存在下でSiaとCTPから活性化体CMP-Siaを合成する。本研究は、脊椎動物CSSの核局在することの重要性の有無を検証すること、およびCSSの核においてシグナル機能があるのかどうかを検証することの2つのことを行うことを目的としている。 昨年度は、マウス由来CSSがNIH3T3細胞内においてプロテアソームによる分解をうけることを明らかにした。しかし、細胞に導入したCSSは末端にMyc標識を付加されていたため、標識による影響を除外するため、標識のないCSSを導入して、NIH3T3細胞のCSS安定発現株を確立した。さらに、CSS活性のあるN末端領域(1-267aa)と機能未知のC末端領域(267-432aa)のどちらがプロテアソームによる分解に重要かを調べるため、それぞれの領域欠失体を作製し、NIH3T3細胞に導入、安定発現株を確立した。以上の各細胞株にMG132を添加し、昨年度作製した抗CSS抗体による細胞染色を行った。その結果、プロテアソームによるCSSの分解は、標識依存的なものではなくCSSのタンパク質発現が厳密な管理下にあること、N末端C末端両領域が関与することが明らかになった。 CSSの核局在の機能については、発生の観察が容易なメダカを用いて個体におけるCSSの機能を調べた。メダカ初期胚(1細胞期)にモルフォリノオリゴヌクレオチド法を用いて、CSSのノックダウンメダカを作製した。その結果、24時間以内の死亡率の上昇、胚体の形成異常が観察され、CSSおよびSiaの発現が初期発生に重要であることが示された。今後、細胞質ゾル局在CSS遺伝子を導入するレスキュー実験によって、核局在における機能を調べていく予定である。
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