平成21年度の研究によって、糸状菌Aspergillus nidulansのgfsA遺伝子がガラクトマンナン中のガラクトフラナン合成に関わる推定糖転移酵素遺伝子として同定された。平成22年度は、gfsA遺伝子と2つのホモログ遺伝子をgfsB遺伝子およびgfsC遺伝子として、更なる機能解析を進めた。細胞壁中のガラクトフラナンを検出したところ、ΔgfsA株では、ほぼ完全にガラクトフラナンが欠失していた。また、ΔgfsB株およびΔgfsC株では、減少していることが明らかになった。また、薬剤耐性試験の結果、ΔgfsA株はSDS感受性を示し、カルコフルオロホワイトに耐性を示すことが明らかになった。また、ΔgfsB株およびΔgfsC株は、親株に比べて薬剤に対して変化が認められなかった。顕微鏡観察による菌糸の形態観察を行ったところ、ΔgfsA株の菌糸は、隔壁間の距離が短く、菌糸は、湾曲していた。しかし、ΔgfsB株およびΔgfsC株では、顕著な菌糸形態の変化は認められなかった。以上のことから、gfsA遺伝子、gfsB遺伝子およびgfsC遺伝子がガラクトフラナン合成に関わっており、ガラクトフラナンが正常な菌糸の伸長に必要であることが明らかになった。さらに、3xFLAGタグを染色体上のgftA遺伝子のC-末端側に導入しGfsAタンパク質の検出系を構築した。糸状菌内のオルガネラを分画し、局在を調べたところGftAタンパク質は小胞体ではなく、主にゴルジ体に局在していることが明らかとなった。このことより、ガラクトフラナンの合成が細胞膜上ではなく分泌経路上で行われることが明らかになった。また、UDP-ガラクトフラノース輸送体は、ゴルジ体に局在していることが明らかにされていることからGftAタンパク質とガラクトース輸送体が協調的に働いていることが示唆された。
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