麹菌を含むアスペルギルス属の持つ酵素の多くはグリコシル化される。タンパク質は、グリコシル化されることによって機能性が向上し、多機能化することが知られている。アスペルギルス属のタンパク質に結合するN-結合型糖鎖とO-結合型糖鎖には、ガラクトフラノースやグルコースなど他の生物では見られない糖が付加されているが、これら糖鎖の生合成に関与する糖転移酵素や生理的機能に関する知見は無い^<1)>。 また、糸状菌は、タンパク質分泌能が非常に高く、外来タンパク質の発現宿主としての利用が期待されている。しかしながら、糸状菌の糖鎖の中には、ヒトに対する抗原性を持つものがあり、例えば抗体医薬等を生産する際の妨げとなる。よって、糸状菌を宿主とした外来タンパク質発現系の開発にはタンパク質の糖鎖改変が必須の技術となる。 本研究では、この糸状菌に特異的に存在する糖を付加する糖転移酵素遺伝子を同定し、糖鎖の機能を解明することで、将来、タンパク質の糖鎖改変に必要となる基礎的知見を得ることを目的とした。
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