研究概要 |
今年度は、多置換複素環構造を母核として有する、重要な生理活性を示す天然物や医薬の一般的合成法の確立を目的として研究を行った。前年度に得られた知見から、マグネシウムビスアミドがベンザインの生成とインドリン形成にきわめて有効であることが分かった。本年度は、確立した反応条件を用いて、本手法の一般性を調べた。その結果、求電子剤によってはアリールマグネシウム種から銅へのトランスメタル化が必要ではあったが、中程度から良好な収率で望みの7位置換インドリンを得ることができた。さらに、インドリン形成後にパラジウム触媒存在下クロスカップリングをワンポットで実施することにも成功している。検討の結果、本反応は立体的に込み合った位置においても円滑に進行することが分かり、従来困難であった多置換複素環の合成法を提示することができた。本方法論を元にして、テロメラーゼ阻害活性を示すディクティオデンドリン類の全合成を達成した。 また、マグネシウムビスアミドがベンザインを円滑に生成させることに着目し、1,3-イソベンゾフランとの[4+2]環化付加反応を行ったところ、本塩基がエステルやアルデヒドを損なうことなくベンザインを発生させることを見出した。また、塩基については、マグネシウムに対して二当量のアミドおよびリチウム塩が必須であることを見出した。さらに、今回確立した方法を用いてイソバツェリンの合成研究を行っており、三環性骨格の構築に成功した。今後、酸化段階の調整を経て全合成を達成する予定である。
|