研究概要 |
本研究課題、2年度目の研究成果を以下にまとめる。キサンテン骨格を基盤とする多作用点性有機分子触媒の開発に関しては、初年度目に見出したプロキラル求核剤を用いる4級炭素構築型不斉共役付加反応の最適条件の精査、基質一般性の検討を行い、最高で95%eeにて目的物を与える触媒系にまで改良を加えた。一方、イプソ-フリーデル-クラフツ型アリル位置換反応を用いるスピロシクロヘキサジエノン類の合成法開発に関しては、基質一般性の検討に加え、触媒的不斉合成への応用を詳細に検討し、Pd触媒に加えて、配位子としてANDEN-TROST ligand、添加剤として酢酸リチウムを加えることにより、高収率、高エナンチオ、ジアステレオ選択的に(80%,89%ee,dr=9:1)不斉4級スピロ中心を有する目的物を得る事に成功した。現在、本反応の応用研究を広範に行っており、幾つかの興味深い知見が得られている。来年度以降、研究を継続して行いたい。数年来行って来たジアミノホスフィンオキシド配位子を用いる不斉合成研究に関しては、2座配位型の新規キラルジアミノホスフィンオキシド配位子の開発に成功した。また、Pd-キラルジアミノホスフィンオキシド触媒系を用いるアリル位アミノ化反応、分子内Mannich反応を用いるオクタヒドロキノリン-4-オンの高ジアステレオ選択的な合成法を確立し、デカヒドロキノリン類の触媒的不斉合成を行った。現在、合成工程の改善を行っている段階である。キラルジアミノホスフィンオキシド配位子に関しては総説の執筆依頼を受け、2011年の初頭に既に出版されている。本分野の研究を先導し、分野として確立するという当初の目標、目的はある程度達成できているものと考えている。
|