研究概要 |
平成21年度は当研究室で開発したインドール合成法および引き続くStilleカップリングによりトリプロスタチン類に見られる2,3位置換インドール骨格を構築し、トリプロスタチンA及びBを合成する検討を行った。我々の開発した第一世代インドール合成法[J.Am.Chem.Soc.1994,116,3127]を適用するとオルトアルケニルイソシアニドに対して以下のような変換が期待できる。すなわちトリブチルスズラジカルがイソシアニドと反応することによりイミドイルラジカルが生成し、5-exo環化反応を行った後に水素化と引き続く異性化を経ることによって2-スタニルインドールを生成するというものである。また予備実験からも分かっていたことだがラジカル環化反応においては望みの5-exo環化だけでなく6-endo環化も進行し、熱力学的に安定なベンジルラジカルの水素化によって生成するジヒドロキノリン体を与えることが分かっている。このような副反応はラジカル環化中間体において速度論的に生成するラジカルが安定化されない場合に逆反応が進行することで引き起こされると考えられるため、今回の基質においてもそのような反応が予想された。実際検討を行ったところほぼ1:1という不満の残る結果が得られた。そのため速度論的に優先して生成する5-exoラジカル中間体を低温下速やかに水素化するべく種々のラジカル環化条件を試みたところ、我々は通常用いられるAIBNではなく、より低温でラジカルを発生することが可能だと示されているV-70[Org.Proc.Res.Dev., 1998, 2, 250]を用いることによりほぼ完壁な選択性で望みのインドール体を得ることに成功し、その後のStilleカップリングにより2,3二置換インドールを構築することに成功した。ここから天然物への変換は現在検討を行っている。
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