研究概要 |
面性不斉エノラートを経由するsilvestrolの全合成を目的に研究を行った。鍵反応として、分子内Dieckmann反応と分子内共役付加反応を用いる2つの合成ルートを考案した。C-O軸性不斉エノラートを経由する不斉反応では、芳香環上の置換基が光学純度に多大な影響を与えることが判明している。特に、分子内アルキル化ではフェノール性水酸基の隣接位に置換基が必要である。しかし、分子内共役付加反応では、無置換の場合でも不斉誘導が可能である。そこで、初めに、silvestrol合成に必要な官能基を有する基質を用いて分子内共役付加反応を行った。基質は、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸(1)から6行程で合成したクマリン誘導体と、アニソールから5行程で合成したキラルα-ヒドロキシエステル2との光延反応により合成した。この基質に対し、塩基にナトリウムヘキサメチルジシラジドを用いTHF中、-78℃で1時間反応を行った。しかし、所望の環化体は全く得られず、原料の分解物及び原料が回収されるのみであった。これは環化反応によって形成される6,6,5員環からなる三環性化合物のエノラートが環歪みのため不安定なためであると考えられる。そこで、現在他の塩基及び溶媒の効果について検討中である。 一方、1から4行程で合成した基質3を用いてDieckmann反応についても条件検討を行った。即ちLDAを用いTHF,-78℃にて2時間反応を行ったところ、所望の環化体が39%で得られた。尚、Dieckmann反応における隣接位置換基効果については十分な検討が為されていない。そこで、置換基効果の一般性に関しても同時に検討中である。また、不斉誘導が十分でない場合を考慮し、隣接位にトリメチルシリル基を有する基質合成のルート開発も同時に行っている。
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