糸状菌Penicillium sp.GKK1032株の発酵培養液から単離されたGKK1032A_1、A_2及びBは、デカヒドロフルオレン骨格(ABC環部)及びフェノールエーテル結合を介した12及び13員環を構造上の特徴とする極めて複雑な多環性アルカロイドである。これらはヒト子宮頸癌由来上皮細胞Hela S3に対し、アドリアマイシンと同等の細胞増殖抑制活性を示すことが知られている。そこでこれら多環性アルカロイドの不斉全合成経路の確立、及び類縁体合成と続く構造活性相関研究による活性発現機構の解明を目的として本研究を行った。 初めに、D-マンニトールより分子間Diels-Alder反応、Stillカップリング反応等を用いテトラエン化合物を合成した後、ルイス酸を用いた分子内Diels-Alder反応を行いGKK1032類のABC環部に相当するデカヒドロフルオレン骨格の立体選択的構築を達成した。 さらにAldol反応により側鎖を伸長した後、分子内光延反応を用いた13員環の構築を試みたが、目的とする化合物を得ることは出来なかった。 また、二級アルコールとフェノール誘導体の光延反応により側鎖部分を導入した後、分子内Reformatsky反応による13員環の構築を検討したが、反応は進行せず目的とする13員環化合物を得るには至らなかった。 現在、閉環メタセシス反応を用いた13員環の構築を検討しているところである。
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