研究概要 |
本研究の目的は、優れた医薬品合成法や製造プロセスを構築する上で有用な固相反応系を開発するために、各種イオン性高分子ゲルの合成を行い、その特性や機能性に着目した反応系の設計を行い、新しい発想に基づいた有機反応システムを構築することにある。以下に平成22年度における本研究の成果を示す。 1)前年度の研究成果により、アンモニウム塩やイミダゾリウム塩等の陽イオンを高分子鎖に持つイオン性高分子の合成が可能になったが、今年度はスルホン酸塩等の陰イオンを高分子鎖に持つイオン性高分子の合成とその物性の評価(FT-IR,FT-NMR,SEM)を行った。その結果、スルホン酸塩を持つアクリルアミドとイソプロピルアクリルアミドを共重合させることにより、安定なイオン性高分子を与えることを見出した。さらに、これらの知見を活かすことにより、22年度研究実施計画で主要目的として掲げた両性イオン型の高分子合成に成功した。また、各種イオン性高分子をシリカゲル表面にグラフト化させることにより、種々の溶媒中で安定に扱うことが可能になることも明らかにした。 2)イオン液体等のイオン性環境中では種々の酸化反応が良好に進行することが明らかにされている。そこで、様々な金属酸化物塩を導入したイオン性高分子を調整し、これらを用いる環境調和型酸化反応への展開を行った。その結果、陽イオン型高分子にはタングステン酸塩、オスミウム酸塩、ルテニウム酸塩酸を安定に保持することができ、陰イオン型および両性イオン型の高分子にはバナジウム酸塩を安定に保持することが可能になり、それぞれ回収・再利用可能な酸化触媒として働くことを明らかにした。また、これらの方法の応用として、インドールカルボン酸類の酸化的脱炭酸反応への適用についても検討を加えた。
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