甘草(カンゾウ)は、全漢方処方の約70%に配合される重要な生薬であり、有効成分としてグリチルリチン(GC)を含んでいる。GCの定量分析法には、各種カラムや質量分析装置を組み合わせたHPLC法が一般的であるが、我々は抗GC MAbを用いたELISA法によるGCの定量分析の開発とその実用化を行ってきた。そこで本研究課題では、抗GC MAbを用いたイースタンブロット法を基盤としたGCの網羅的定量分析について検討を行った。具体的には抗体の特異性に着目し、展開・分離を行わないdot blot法による1シートにつき多数のサンプルの分析が可能となる方法を検討した。その結果、甘草を含む漢方製剤では、GCの明確な化学発光が認められた。一方、甘草を含まない半夏厚朴湯では化学発光は認められなかった。次に、GCの発光スポットをImage Quant TL解析ソフトを用いて数値化し、GCの検量線を作成し、各種漢方製剤中のGC含量を算出し、ELISA法による定量値との比較を行った。その結果、両者の値は良く近似しており、検出限界濃度はng/mLオーダーであり、本法によるGCの網羅的定量分析が可能であることが明らかとなった。 また、黄苓(オウゴン)は、甘草と同様に漢方薬に配合される極めて重要な生薬であり、有効成分としてバイカリン(BI)と称するフラボノイドを含んでいる。そこで、BIに対するイースタンブロット法の確立を目標に研究を行った結果、BI特異的イースタンブロット法の確立に成功し、免疫組織染色へ応用することで新鮮黄苓根中のBIの分布をビジュアル化することに成功した。さらに、dot blot法と免疫化学発光法を組み合わせ、BIのハイスループット分析について検討を行った。その結果、黄苓を配合生薬として含む漢方製剤では、BIの明確な化学発光が認められ、ELISA法による定量値と良く近似しており、BIのハイスループット分析が可能であることが示唆された。これらの研究成果から今後はイースタンブロット法を医療現場へ応用することを企画している。
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